top of page

ウジャマー/トークイベント3回目(全3回)

やりたいことが年々増えていく。

「リタ」という場で語る、これからのこと





(金野)

最近、使っていなかった畑を再利用しようとしているって聞いたんですけど、、

(伊勢崎)

おじいちゃんがしばらくずっとやっていなかった田んぼをあたらしく借りました。そこをいろんな人たちが来て親しめるような場所にしたいなあと思って開墾しています。それからもうひとつ、あたらしく田畑を借りたんです。うちの子ども3人のうち2人が行っている保育園は農村地帯にある。でも、僕らぐらいの世代で実際に農業している人たちってほとんどいないんですよ。おじいちゃんたちは農業をやっているけど、栽培は一般的な農法。農村にいるんだけど、田んぼに入ったことない子もいる。土に触れられる環境はあるんだけど、触れている環境がないから、自分のアイデンティティ、自分がこの土地で生まれた喜び、意味を知る機会がない。むしろ、都会から来る子どもたちのほうが田んぼとか畑とかにすごく詳しいんですよね。せっかく近くに環境はあるんだけど、親しむ場所がないので、保育園の隣の畑を僕がお借りして子どもたちが畑に親しめる場をつくろうと思っています。

でも、そこにはすごいゴミが埋められていたりして、、

(金野)たとえば、どんなものが出てくるんですか

(伊勢崎)タイヤとか、電球とか、、

(金野)それらを拾って、一からやるのは、、たのしいから?

(伊勢崎)たのしいですね(笑)。

(金野)伊勢崎さんの話で感銘を受けるのは、「里山を原風景のまま残したい」っていう想い。それは、小さいときから自然と親しんでいたこともあったんですか?

(伊勢崎)それがね、どうしてそう思ったのか僕もわからないんです。今もうちは秋に稲刈りをしたら「はぜ掛け」で自然乾燥をしているんですけど、僕が小さいときに稲穂を刈ってたくさん運んだらほめられた記憶があって、、そのことをすごく覚えているんです。

(金野)ほめられて、うれしかった?

(伊勢崎)それはちょっと、、わからないなあ。

(伊勢崎)小さい時からやってほめられたことを今もつづけているのかな。


(来場者)全国に仲間はいらっしゃいますか?

(伊勢崎)多分いると思います。交流していた時期もあったんだけど、、

(金野)そうですね。以前に比べて増えているとは思います。伊勢崎くんの場合は、まずは自分のところをしっかりやっていますよね。

(仲間との)そういった交流をできたらいいと思っていて、そのはじまりがここ(リタの「ウジャマー」)だと思っているんです。そういったお話を聞いて意識して、みんなで目指す先を見たり、これからこうしていこうということを各々が持ち帰ってくれて、、ちょっとしたことからはじめる。おっきい変化ってできないですもんね。ちょっと考えを変える、ちょっとずつ実践するっていうのがすごい大事だと思っています。

(伊勢崎)自分で買ったりおいしいところで食べるたりするのももちろんたのしいけど、自分で働きかけて満たされたものを自分がいただいたり、食べてくれたりというのはもう最高の喜び。むしろそれをひとり占めしているわけです。農村にいながら、みんなそれをしていない、こんなたのしいことを。それをうまく伝える手段があったら教えてほしいです。場所も、いろんなものがすべて余っているし、みんなやってみてほしい。

(金野)伊勢崎くんたちの活動を見て、「ちょっとやってみたい」って人が増えてきたりしていないんですか? 

(伊勢崎)たまに若い子たちが遊びに来たりしているかな。地元では影響していないかもしれないですけど、、

(金野)けど、確実にその背中をみて育っている子どもたちとか、次の次を考える人が増えているかもしれないですね。

今日もありがたいことに、11時のオープン前から人がすごかった。これだけ人が来てくれるっていうことは、少しずつ意識が変わってきているんだなって僕は思っています。お子さん連れで来てくださる方もいる。子どもたちって、次への希望、宝じゃないですか。食べることもいろいろ考えたりするんですけど、安心できる生産者さんが一堂に会して、おいしい野菜を食べられたらいいっすよね。みなさんのおかげでこうやって会をできているので、すごいありがたいと思っています。


(金野)そのほか、なにか活動していることはありますか。

(伊勢崎)岩手県平泉の「山地酪農」(*)の中洞(なかほら)正さんのところで、若い研修生たちが遠野で中洞学校っていうチームが合宿をしているんです。僕も便乗して、山地酪農をやりたいなあって思っています。

(*=山地酪農、「なかほら牧場」はその北上山系の標高700〜850mの窪地に位置し、

平な牧草地ではなく、山の植生を活用する「山地(やまち)酪農」という手法を用いて放牧酪農を行なっています。『牛のため、山のため、乳製品を買ってくれる生活者の健康のため』をテーマとして、なかほら牧場と山地酪農の維持・発展をめざしています。HP https://yamachi.jp/)

うちの地域だけじゃなくて、今どこの農村も担い手がいない。そこの価値とか意味っていうのを与えられていなかったし、感じる瞬間もなかったから。もしかしたら太陽光の大きな事業者が山を買いに来るかもしれないし、山の木を切りに、買いつけにくるかもしれない。でも僕は守りたいんです。売るなって言っているわけじゃない。利用してもいいんだけど、個人のものであっても、個人のものじゃなくて、共有の財産だと思っている。できればそこ全部、分水嶺、水の流域のところをホールで将来的には財団みたいなのをつくって。今、鹿さんとか熊さんとかが降りてきていて、山と人の住んでいるバッファーゾーン(中間の領域)も揺らいでいるんですよ。ですから、そういった場所を山地酪農にするとか。

あとは、電力を僕たちも利用しているので、できれば小水力発電をやりたい。それも自分たちが利活用するための小水力発電。売電目的だと訳がわからなくなるから。ある程度の水量を確保するためには山がある程度健全じゃなきゃいけないという理由が出てくると、林業の施工の仕方とか変化せざるを得ない。山を守る手段として将来的にはそういうことまでできれば、その集落を維持していくためのひとつのしくみの例として、小水力発電もする、山も手を入れながら、田んぼもあるというのが共有の価値観としてもう1回挑戦できるんじゃないかなと思っています。これはすぐにできないんですけど。

(金野)そういったビジョンを共有して賛同してやってくれそうな人はいますか?

(伊勢崎)どうですかね。これから、ですかね。

(金野)こういった話を聞いて興味もってくれて、コンタクトをとってくれる人がいるかもしれないですね。全国でそういった事例はあるんですか?

(伊勢崎)ないですね。ホールでやっているところはないんじゃないかと思います。

(金野)そうか。でも、やれたらそれはすごいことですよね。

(伊勢崎)でもやれる。やるかやらないかだけで。僕たち、すごい贅沢なんですよね 超贅沢。お金ないけど、働きかければ生み出せるところに住まわせてもらっている。農家の人たちは「あれが足りない、これもない」「あれがほしい、これもほしい」って言うけど、あるんですよ! ここに。あるんです!


(来場者)

伊勢崎さんが自給自足をするのが夢だったっておっしゃっていたけど、それはなぜそういうふうに考えたんですか?

(伊勢崎)なぜかはわからないんですよね(笑)。でもやはり年を経るごとに、それこそ3.11のとき、もう一回ほんとうにそうしたいと思いました。もしかしたらここにも被災された方いらっしゃるかもしれないですよね。僕は当時ボランティアですぐ駆けつけて活動してたんですけど、すごい映像だったじゃないですか。だから僕、山も流されたんじゃないかと思ってたんです。でも、山も畑もあった。だから、僕はまた復活できると思った。と同時に、失ったものは人間がつくったものだった。昔の三陸の津波の文献をみると、残ったものは木材だったり鉄だったりとかで、人間が人工的につくりだしたものはなかった。自然はリセットされるし、鉄はまた再利用できる。それができる自給自足的な暮らしはいいと思ったんです。

(来場者)自給自足というと自分、家族とか周りの人だけでまわしてやっていこうってみたいなという考えもある。こういう場でみなさんにご自身の経験を共有したいっていう気持ちと根本のところでそれは矛盾しないものなのか? もしかしたら自給自足をやりたいっていうのは自分だけが助かればいいっていう考えもどこかにあるのかもしれないのでは、、

(伊勢崎)それはたぶん、そうだと思います。今日お話しているのはこの場所は「リタ」、自分ということじゃなくて利他ですよね。でも、利他からまわって自分になる、自分があるからまた利他になっていくから、それは同じと僕は解釈しているんです。自分本位であればいいということを僕は肯定しているわけじゃなくて、それでいい。「利他」からまわって自分、自分があるからまた「利他」になる、これは循環、循環でまわってくる。「利他」っていうのは自分本位、それでいいんですよ。それがあってまた他の人にこう与えて、また還ってくる。自分のためです。でも、自分が生き残ることが地域や日本が生き残ることになる。

(金野)まずは自分、身近なところからかなあと思いました。世界平和っていうのは、、言って活動することはすばらしいことなんですけど、まず自分の生活をしっかりしなければどうなんだろう、と僕自身も思っています。まずは自分たちの場所をととのえて、たのしく、ポジティブに、みんなを巻き込みながら少しずつおもしろいことやっていけたらいいなと。おもしろいことっていうのは、少しでも次の世代に残るようなこと。

(伊勢崎)僕は「風土農園」という屋号で農家をしていて、妻(伊勢崎まゆみさん)といろいろディスカッションして意見の食い違いがあることもあります。

僕は「作付した生産物、つくったもののおすそわけ、副産物をみなさんに提供したい」っていうコンセプトでやりはじめた。すると、「副産物って失礼じゃないか。商品として副産物はいらない」って言う人もいらっしゃった。でも僕としては、副産物としては量もたくさんある。僕や家族が安心して食べられるものの副産物を提供する、っていうのは今も変わらない。だから、利潤高そうだから、お金になりそうだから販売する分は別に作って、自分は安心なものを食べるというのじゃなくて、みなさんと同じものを食べて共有したいなと思ったのでやりはじめました。同じように作付けて、みなさんと同じように副産物というかたちでお届けできたらいいなと思っています。



ウジャマーでの風土農園さんのブース。


(金野)自分たちがおいしいと思って自信をもってつくったものを提供できるということですよね。(自分たちが食べるものと、みなさんが食べるものを)わけることなく。

こうして活動されてきて、今年やってみたいことってあったりしますか。

(伊勢崎)今年はあたらしく開墾している田んぼ、ですね。

(金野)今はどれぐらいまで開墾しているんですか

(伊勢崎)できたのは今の時点で10分の1ぐらい。保育園の畑は来年からはじめます。

(金野)何を育てる予定ですか?

(伊勢崎)なんでも(笑)。自分のコンセプトが「勝手に公共事業」なんです。保育園は0歳~6歳までぜんぶ給食なんですけど、ゆくゆくは保育園の給食のお野菜をその土地でつくって…あ、これは承諾を得ていなくて僕が勝手にそう思っていることなんですが…子どもたちが種をまいて収穫したものが食卓にのぼる。本来それはあたりまえなんだけど、それが今は農村でもないから、できたらいいし、そういうのをやるつもりです。そういうのをやればそれを見て行政がいいと思えばやればいいし、ないものを行政がこれをしましょうっていうことはないんですよね。

(金野)実践するって大事ですね。

(伊勢崎)予算があったら、保育園の畑にハウスがほしい。なにかあったら教えてください。

(金野)最高じゃないですか!

(伊勢崎)年々やりたいことが増えていく。時間はどんどん足りなくなるし、肉体的な衰えもある。やりたいことは増える、なかなかそこは、、むずかしい(笑)

(金野)お手伝いしたいっていう本気の人がいたら(伊勢崎さんに)連絡していいんですか。

(伊勢崎)やること山ほどあるんで、ぜひ。

(金野)よかったら連絡を取り合って、みんなで盛り上がっていきたいと思います。

今日はありがとうございました。



bottom of page