2024年3月3日
盛岡のリタ 香水茅の間にて開催された
田村種農場 田村和大さんのお話会に参加しました。
お話会のテーマは、
/ / / / / / / / / / / / /
風土と在来作物
次世代の為に
/ / / / / / / / / / / / /
お話会のはじまりは田村さんの経歴のお話からでした。
成長する過程で得た学びや、経験を重ねていく中で決断をしてきたことを
世の中の流れに照らし合わせて多角的な視点からご紹介くださいました。
2011年に「農業をやろう」と覚悟を決めてから新規就農認定を受けるまでかかった歳月は4年。
就農計画に記した、
•岩手の在来作物を繋いでいくこと
•農薬•化学肥料を施さないこと
このふたつの大きな(そして、とても大切な)構想の承認を
得るのがとても難しかったそうです。
承認を得るために緻密に計画を立てて書類を作成したり、
関わる行政や地域の方とのやり取りを続けて来た過程のお話には学ぶところがたくさんありました。
これから農業に携わる方には大いに参考になったのではないでしょうか。
淡々とお話をされていましたが、初志を貫徹する田村さんの
強く静かで熱い思いがひしひしと伝わってきました。
そして認定を得てからのお話にうつり、
変化していく世の中とご自身の体調に柔軟に対応しながら
活動を続けて来た試行錯誤の過程をグラフにした分かりやすい解説がありました。
田村さんの用意してくださった資料の見やすいこと!
後半は、田村さんが栽培して来た岩手在来作物のうち16種類紹介いただき、
その中の3つの作物についてさらに詳しいお話がありました。
- 水稲 岩手亀ノ尾一号
- 小麦 フルツ小麦
- 大豆 山白玉
実際に植物をお持ちくださり、みなさん、その長さや大きさに驚いて!写真で見た時とは違う反応をされていたのが印象的でした。
実物を見るとやはり盛り上がりが違いますね。
在来種を探していくなかで地域の方々と信頼関係を構築していき託された種。
その種を元々の産地に戻す活動もされているそうで、田村さんの誠実で懸命な活動のおかげで
貴重な在来種の種が繋がっていることを知りました。
最後は、旧暦から季節や気候を予想する「農事暦」について。
予測を立てることで、気候変動による影響に対応しやすくなったそうで、このお話は個人的にとても興味をそそられました。
田村さんは昔の文献を探し、調べ、そして膨大なそれらの情報を整理されていらっしゃいます。
作物ごとにきれいにまとめられたファイルもご持参くださいました。
そのファイルに、今まさに田村さんが経験されてることが加わっていき、これからの世代の人々の参考文献になっていくのですね。
先人の思いが時を経て繋がっていく、目には見えない流れの尊さと逞しさを感じました。
田村さんがこれまでに体験して来た、良かったことも大変だったことも、上手くいったこと上手くいかなかったこと、そして風土と在来作物から学んだ事柄を惜しげもなくお話しくださった今回のお話会。
仕事や生活に向き合う全ての人が参考にできる内容で学びに溢れていました。
お話会は午前と午後の2回開かれました。
午前の回と午後の回の間に田村さんとお話をさせていただき、
農業従事者以外の人が生活者として農に携わるにはどんなかたちがあるか、良いと思うか。伺いました。
都会でも〈生産緑地〉と呼ばれる農地が一定数存在しているそうです。指定するのは自治体ですが実際に管理しているのは地主さん。
生産緑地に指定された農地を地域の方と協力して活用している地主さんもいるので、まずは地域の自治体に尋ねてみたり、地域の会報をチェックしたり、コンタクトをしてみてはどうかとご提案頂きました。
今後、生産緑地を増やしていく、もっと活用していこうという動きもあるそうです。
注釈 :
生産緑地とは
都市計画上の農地の保全を目的として制度化された農地のこと。
緑地の持つ地盤保持や保水などの働きによる災害の防止、および農林漁業と調和した都市環境の保全などのため、将来にわたり農地または緑地等として残すべき土地を自治体が指定することにより、円滑な都市計画を実施することを主目的としている。
日本農業新聞で情報を得るのもおすすめで、無料のWEB版からチェックしてみるのもいいかもしれません。とのこと。
また、「みどりの食料システム戦略」という
安定的な食料供給を目指して農林水産省が定めた食料方針もスタートしており、この方針は農林水産省のほか、消費者庁、環境省も関わっているプロジェクト。
日本国内での農林水産業の生産力を上げることはもちろん、持続可能な食料システムを実現するために環境問題を意識しているのが特徴で、農林水産業に伴う温室効果ガスの放出や、化石燃料由来の肥料の使用量を減らすといった環境負荷の低減策が中心となっています。
よって、農薬も肥料も使わない農法に注目が集まっているそうです。
最後に、実際に土に何かを植えてみよう!となった時には、
まず、安心安全な種を選ぶのが大切で、野口種苗研究所などで購入するのがよいのでは?とアドバイスをいただきました。
そして、気楽に楽しい気持ちでやってみる。
最初から上手くいかなくてもそれは当たり前で、芽が出たらとってもラッキー!と思うくらいのスタンスでやってみることが大切だそうです。
まずは自分の住む街の取り組みや状況を知ることから、そして、土に何かを植えてみることからぜひはじめてみてください。
田村さんが教えてくださった内容は、先日みれいトークで伺った健一自然農園の伊川健一さんのお話に通ずるところもあり、日本の農業に明るい光を感じるものでした。
このような情報を知ること自体がとても大切だとあらためて感じ、身近な人たちと国の取り組みについて話しあってみようと思いました。
みなさんもぜひ、何かアクションをしてみてくださいね。
そして、よければどんなアクションをしてみたのか、教えてください!
今回のお話会が開催されたのは盛岡にある素敵なお店、リタです。
オーナーのくみさんはマーマーな農家サイトのスタッフでもあります。
リタでは田村さんの豆、お米などの作物の販売もされており、
もう10年近いお付き合いだそうです。
わたしは田村さんとお会いするのは今回が初めてでした。
しかし、田村さんの黒豆と大豆はいただいたことがあり、
その透き通るようなすっきりとしたお味から、きっと実直で
素直な方なのだろうと想像をしていたのですが、
本当にその通りの方で、作物は育てた人をあらわしていることを実感しました。
お話の中で特に衝撃を受けたのは労働時間のこと。
これまでの4,000時間からぐんと短縮して1,500時間を目標にしているそうです。
この先の歳を重ねてからの働き方を考え、仕事は半日。
残りの半日は休む。
それを実現するために、作物は穀物を中心にし、機械にも頼り、その日に作業をする畑を決めて畑間の移動にかかる時間をカット。
すると、効率が良くなり、ご自身の心身も健やかに保てるようになったそうです。
身に起こるひとつひとつの出来事にしっかりと向き合って、
フィードバックをしながら進んで来られた田村さんの歩みをお聞かせいただいて感じたのは、まずは目の前の現実を自分の目で見てそのままを受け入れる大切さでした。
波があっても同じことを続けていく。という言葉には説得力がありました。
種屋や育てている方々を訪ねて信頼関係を構築し
種を譲り受けて育て、種を増やして繋いでいる田村さんの活動は素晴らしいもので、その言葉は参加していた誰もの心に響いたのではないでしょうか。
今回のお話会では最後に山白玉大豆の種子の販売もありました。
ここからまた種が繋がっていくのもたのしみです。
どなたか、山白玉の種子のその後の成長をお聞かせいただけたらうれしいです。
3時間ほどのお話会は素晴らしい時間でした。
最後の質疑応答でも、終わってからも、みなさん田村さんを囲んでお話を伺っていました。
盛岡の、岩手の皆さんの繋がりにも感動しました。
田村さん、リタさん、素晴らしいお話会をありがとうございました。
@tamura_seed_farm
@rita_morioka
マーマーな農家サイト
あい
おまけ
盛岡を発つ日、お気に入りのお店をはしごしました。
DueManiさんでは、山白玉大豆のミネストラとフルツ小麦のパンをいただき、
くふやさんでは、黒五葉(黒豆)の入ったデザートをいただきました。
どちらも田村種農場さんのもの!
盛岡で栽培されたものが、盛岡のレストランで提供されている。
ローカルで、なんて素晴らしい循環なのでしょうか!
その土地で採れたものをおいしくいただき、よりいっそう豊かな気持ちになりました。
Comments